ドラマストーリー解説・考察

SPEC(スペック)

映画(SPEC〜結(クローズ)〜 漸(ゼン)ノ篇)のストーリー
 ニノマエとの死闘で当麻と瀬文は重傷を負っていた。そんな中、同じく瀕死の重傷を負って、当麻たちと同じ病院に入院していた青池里子が突然姿を消した。防犯カメラには娘の青池潤と共に歩いていく里子が写っていた。当麻たちは里子の行方を捜しに行く。

 一方、中国では、特殊部隊がとある実験場へ突入していた。そこは秘密裏に人体実験が行われていた場所であった。ニノマエのクローン。強力なSPECを持つニノマエをクローンで増やし、人間兵器として利用しようとしていた。転がる子供の死体と漂う腐臭がおぞましい。実験をおこなっていたのは「プロフェッサーJ」と呼ばれる女であった。

 「あれは?何だ?」隊員の一人が叫ぶ。次の瞬間、部隊は壊滅した。

 部隊が壊滅する様子の映像を見ていた面々、と言っても覆面をした者たちばかりであったが、は冷静であった。フリーメイソンやバチカンなどよりももっと強大な集団である彼らにとって、それは特別なことではなかった。しかし、SPECホルダーたちがこのまま台頭していくことは許すわけにはいかない。それは自分たちの立場をも脅かす可能性があるからだ。

 「シンプルプランはどうなっているのだ」

 その中の一人がそう言った。

 「わが国、日本としては…」低い声の男は、はっきりした日本語で続けた。

 「シンプルプランの即時停止を要求する。でなければ全面戦争も辞さない。」

 「馬鹿な。敗戦国風情が何を言っているのか。」口々に非難する声の中、男は続けた。

 「我は卑弥呼である。」そう言って男は彼らに向かって手をかざした。そこにいた全ての者は消滅した。一人を除いて。


 ニノマエと消滅させた男−セカイは同じく白い服を着た女と食事をしていた。おなじみの中華料理店である。餃子が人気のようだ。

 「兄者のおかげで全面戦争だ。俺はべつにそこまでしなくても良かったんだがなぁ。」

 「よく言うわ。それならなぜニノマエを消したのよ。」

 「…。それより、どうして青池里子を治した?勝手なことしやがって。」

 女−潤は答えた。

 「別に…。呼んでくれた礼をしただけよ。」

 「どうだかな。青池の腹の中から出てきて情でも移ったんじゃねぇのか。」

 「まさか!冗談はやめて。」

 「だといいけどな。」そういってセカイは餃子を食べた。

 野々村係長は電話をかけていた。

 「そうですか…。御前様はそんなことを…。わかりました。私は刑事です。その魂に誓って覚悟はできています。」

 スーツケースを持って出て行こうとする野々村に当麻と瀬文が声をかける。

 「どちらへ?」

 「いや〜ちょっとハワイの方へ旅行へね。」

 「こんな時にですか?」

 「いや〜だって私いても役に立たないし。」

 「それもそうか。」

 「まぁ、何かあったときのために、この引継ぎ書も置いていくから。」

 「何ですか、縁起でもない。」

 「ふふふ、あとサプライズもあるから。お楽しみに。じゃ〜ね〜。」

 そういって野々村はエレベーターを降りていった。


 そこへ当麻の電話が鳴った。自宅の祖母からである。出ると死んだ父の友人が訪ねてきているとのこと。話を聞きたいと思った当麻は瀬文を連れて自宅を急いだ。

 当麻天の友人、湯田はNASAで働いているという。当麻は湯田に天が殺された理由について尋ねる。湯田によると、天ははやぶさの仕事以外に、いろいろな研究をしていたとのこと。あるとき、プロフェッサーJという女から研究を手伝ってほしいと依頼される。しかし天はそれを断ったという。そのことで、強大な組織の手によって殺されたのだった。

 「おのれ、裏切ったな!」

 突然祖母が変貌し、襲い掛かってきた。その手には大量の手榴弾があった。

 「おばあさま!じゃない!?」

 当麻がそう言うより早く、瀬文は当麻と湯田を連れて部屋を飛び出す。同時に部屋は大爆発した。

 当麻の祖母は爆発で死亡し、湯田も瀕死の重傷を負った。祖母は明らかに操られていたようだった。何者かのSPECであることは間違いなかった。

 「当麻君!」

 馬場管理官が駆けつけてきた。

 「野々村係長が!」そういって馬場は野々村の引継ぎ書を渡した。

 そこには野々村が単独行動でシンプルプランを阻止すること、そしてシンプルプランの核となっているSPECホルダーたちに特効のウィルスが日本に運び込まれることを阻止することが記されていた。そして、サプライズとして…吉川が一命を取り留めていたことが書かれていた。 その後未詳にバイク便が届いた。そこにはシンプルプランのウィルスが入っていた。

 「野々村係長…どうして…」当麻は自分の不甲斐なさに悩んでいた。自分がSPECホルダーだから気を使われたのか。そんなことを考えていた。

 「俺たちの思いをなめんじゃねぇ。」瀬文はそう言って続けた。

 「野々村係長はお前がSPECホルダーだとかそうじゃねぇとか考えて行動したわけじゃねぇ。それぐらいわかれ。」

 「俺たちは当麻紗綾を一人の仲間として大事に思ってるだけだ。」

 「瀬文さん…。私が道を踏み外そうとしていたら、撃ってくださいね。」

 「当たり前だ。」

 当麻は野々村から届いたシンプルプランのウィルスを大学時代の先輩である福田健太郎に依頼して、ワクチンを作ろうとしていた。福田は困惑しながらも協力すると言ってくれた。

 その時馬場と一緒に野々村が現れた。

 「係長!ご無事だったんですか。」

 「あぁ、もちろんだよ。何度も電話したのに出ないから直接来ちゃったよ。」

 携帯電話を見ると、野々村からの不在着信が並んでいた。

 「すみません。でも無事で本当によかった。」

 「いやいや。それでね、そのウィルスなんだけど、僕のほうから上を通じてワクチンを作ってもらう手はずも取ってあるから渡してくれるかな。」

 「あ、そうだったんですか。わかりました。」そう言って当麻は野々村にウィルスが入ったビンを渡そうとした瞬間、

 「ちょっと待て!」と聞き覚えのある関西弁の男の声が響いた。

 「吉川さん!」

 そこにはミイラ化して一命を取り留めた吉川が立っていた。

 「吉川君…君死んだんじゃなかったの?」野々村がそう言った瞬間、当麻と瀬文は野々村に銃を向けた。

 「お前、何者だ。吉川を蘇生させたのは野々村係長自身だ。それを知らないお前は何者だ。」

 野々村の形相がみるみる変わっていく。野々村もまた操られていたのだ。

 「そのウィルスをよこせ!」そう言って野々村は当麻を羽交い絞めにして首を締め上げた。

 「この体温…まさか死体を!」

 「そうさ。せっかくもう少しでウィルスが手に入るところだったのに。とんだ邪魔が入ったわ。」

 「てめぇ!」瀬文が叫ぶ。

 「さぁ、早く渡さないとこの女の首がへし折れるよ」

 その時野々村の形相が変わり、いつもの野々村の顔に戻っていった。

 「今のうちに…」

 「今のうちに、わしを撃て!」刑事魂で意識を取り戻した野々村を瀬文は撃った。

 「うおおおおお!」

 「いざ、さらばだ…」野々村はそう言い残して息絶えた。

 「野々村係長…」

 ガシャン!ガシャン!

 突然響き渡る衝撃。振り返るとそこには中国武芸者の格好をした女が立っていた。

 「何者だ、てめぇ。今日の私は一生で一番機嫌が悪いんだよ。」当麻が聞いた。

 「私は城旭斎 浄海(じょうきょくさい じょうかい)。」

 「お前がプロフェッサーJか。」

 「ふふふ。死ね!」そう言うと、城旭斎の扇子から猛烈なスピードで水が飛び出した。

 水も高速で打ち出すと銃と同様に兵器となる。次々打ち出す水に当麻たちもなすすべがなかった。
 ついに追い詰められ、持っていたウィルスの入ったビンを撃ち落されてしまう。中からはシンプルプランのウィルスが噴き出した。

 「当麻ぁ!」

 「こうなったらてめぇも道連れだ!」そういって当麻は割れたビンのかけらを投げつけた。

 「馬鹿な…」城旭斎もウィルスに感染した瞬間、どこからともなく銃声が響いた。

 倒れこむ城旭斎。どこからか狙撃されたのだ。外を見回しても誰もいなかった。

 「野々村係長…今までありがとうございました。」

 当麻たちはそう言って野々村に敬礼した。



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